非認知能力。なにやら難しそうな言葉ですが、何か新しい概念ではなく、これまでも「人間力」や「見えない学力」「心の力」などと呼ばれ、大切だと言われてきたものです。
認知能力とは、読み・書き・計算などの学力のことです。テストをすることで客観的に点数で表すことができます。一方、非認知能力は忍耐力・自制心・コミュニケーション力など、点数で表すことができない能力のことです。非認知能力が伸びることで、認知能力も高まりやすくなり、さらには社会での成功につながる、といったことが明らかにされ、注目を浴びました。
非認知能力が高い人の特徴として、例えば初対面の人でも楽しく会話ができる人は非認知能力の中の「コミュニケーション力」が高い、と言えます。落ち込んでも何日か休めば元気になれる人は非認知能力の中の「回復力」が高い人と言えます。つまり、一般的にいう長所のことが、高い非認知能力のことだと考えれば分かりやすいですね。
これまでの教育は、学校のテストで点数を取ることに比重が置かれ、認知能力に偏ってきた面がありました。しかし、社会が変化する中で、知識が豊富で計算力、記憶力などが高いことも大切だけれども、それと同じくらい、忍耐力・自制心といった力も大事ですね、と改めて言われています。この同じくらいというのが大切で、どちらの方がより重要というわけではなく、どちらも重要なんですね。
では、子どもの非認知能力を伸ばすために、家庭でこころがけられることはなんでしょう。非認知能力とひとことで言ってもさまざまな能力を含むため、こうすれば伸びると言い切ることは簡単ではありません。中山芳一さんの『「やってはいけない」子育て』の中では、「家庭での子どもの権利を奪わない関わりの中でこそ育まれるもの」とあります。子どもには育つ権利、学ぶ権利、さまざまな権利があります。その中でも自分で考えたり、意見したりする権利が日本の家庭では危うくなりやすい…。具体的には、子どもの意見を聞かずに親の意見を押し付けたり、子どもがするべきことを先回りして親がやってしまう、といったことです。わがままと思えることでも、頭ごなしに否定せず、なぜダメなのかを伝え、どうすればよいか、お互いが納得する方向に話し合う。親子の「合意づくり」を意識することが必要なのだそう。
話し合いには時間もエネルギーも必要です。気持ちに余裕があるときに少しでも取り入れられたらいいなと思います。普段の何気ない親子のおしゃべりの時間や、真剣な話し合いの時間。自分が生きていくうえで大切だと思っていることを子どもに伝えていきましょう。
参考図書
「やってはいけない」子育て 中山芳一